「あ」から始まる小さなお話*

<雨。>

雨の日が好きといえたら、
とてもいいなぁと思います。
それはメガネが好きというのと、
少し似ているような気がします。

メガネが好きという人は、
たぶんあまり視力のよくない人だと思います。
けれどそれをポジティブにとらえているようで、
ぼくなんかはカッコイイなぁと感心します。

雨は決してネガティブなことではないはずなのに、
いつからか「嫌なこと」として、
ぼくらは向き合っているような気がします。

それは、遠足が中止になったから。
家族旅行が中止になったから。
外で遊んじゃだめだといわれたから。
遊びに行っちゃだめだといわれたから。
お気に入りの洋服が濡れちゃうから。
大好きな鞄が濡れちゃうから。
ずーっとそこに、居られないから。

きっとぼくらは雨に、いつだって、
好きななにかを「奪われてきた」と
いつ頃からか思い込んでいるのかもしれません。

雨を好きになるために、
お気に入りの傘を買うのも、
可愛いレインコートを買うのも、
すてきなレインブーツを買うのも、
それは確かにいいのかもしれないです。
けれど、いちばんは、
雨が「与えてくれるもの」に目を向けるのが、
いいんじゃないかなぁと思います。

会えないともだちを想う時間とか。
ゆったりとした時間が流れる静かな夜とか。
むしろ、雨だからこそ、
積極的に思い出をつくりに出かけたりとか。

「雨だしさ、」そういって、
ふだん誘いにくいあの気になる人に、
声をかけてみるのもありだしね。

雨が与えてくれるものに目を向けて、
生きられたら人生が二倍になるような気がします。

傘も、メガネも、人生をたのしくするために、
ぼくはあると思うんだっ。

イデトモタカ(2011年9月19日)