「け」から始まる小さなお話*

<消せない記憶。>

結局は、じぶんが知っているのです。
じぶんがしたことは、ぜんぶ。

会社を大きくしようとがんばると、
やがて必ず「税金」という問題が出てきます。
たくさん儲かって、たくさん稼いだら、
その分だけたくさん支払わないといけない。
場合によっては諸々込みで利益の半分くらい
払わないといけない。
これはほとんどの人にとって「嫌っ!」なことです。
そのために多くは節税を、少なくは脱税をして、
そこから逃れようとします。
けれど、例えそれがうまくいったとしても、
「ズル」をしたことは、じぶんが一番よく知っています。
その記憶は消せないのです。
つまりそれを知りながら、その後ろめたい記憶を抱えて、
これからもずっとやっていかなくてはいけません。

会社のような大きな話でなくとも、
ともだちに借りたお金やモノを
忘れたフリをして返していなかったり、
約束したことなのに、知らんぷりをしてみたり、
見栄を張ってついた嘘や、
見て見ぬフリをしてやり過ごしたことは、
みんなみんな、じぶんが知っているのです。
だれに言われるまでもなく、わかっているのです。
消せない記憶として、あるわけです。

そしてこの、じぶんが知っているということが、
なにより厄介なことなのです。
その後の、あらゆるパフォーマンスに
暗に影響してくるわけですから。
幸せになりたくてがんばろうと思ったのに、
その過程でズルをしたり嘘をついたりしたことは、
求める結果と相反することとして、蓄積されていきます。
結局はじぶんでじぶんを「その程度の人」として、
認識する素材となってしまいます。
これは、ねぇ、つまらないですよ。

ぼくにもズルをしたい気持ちや、
忘れたフリをしたいこころや、
嘘をついたり知らないふうを装いたいと思うところは、
もちろんありますし、ずいぶんしてきたとも思います。
人間には、元来そういう部分があるともいえます。
けれど、やっぱり、じぶんが知っているのだということを、
きちんと自覚して、常に思い出して、
じぶんがじぶんに正直者だと、正々堂々としていると、
尊敬できる人でありたいなぁと思います。

結局は、じぶんが知っているのです。
じぶんがしたことは、ぜんぶ。

イデトモタカ(2013年5月15日)