「ち」から始まる小さなお話*

<知識の魅力。>

知識には魅力がある。
魔力というほうが近いかもしれない。
それほどまでに、人を、あなたを、
惹きつけるチカラがある。

本屋さんに行く。
するとそこには無数の知識が溢れている。
あっちを見ても、そっちを見ても、
あなたの知らないことについて書かれた
本という体裁をとった知識が山積みになっている。

一つ知りたいことができれば、
そこから芋づる式に欲しい知識が増えていく。
一つ知ったことができれば、
更に手に入れたい知識の数が増していく。
ますます知識があなたを魅了していく。

やがて知識はあなたに近寄って、
耳元でそっと囁くようになる。
(知らないと、まずいんじゃない?)
と、友人のように大丈夫かと心配してくる。
そうして人は、あなたは、
このプレッシャーに負けそうになり、
多くの場合、完敗してしまう。

知らなければいけない。
知らなければいけない。

いつからか、人は、あなたは、
知るよろこびより、
知らない恐怖に動かされそうになる。
知らないとまずいんじゃないかと思うようになる。

けれど、そんなものは、
本来なにもなかったものだ。
あなたはすでにたくさんのことを知っている。

わたしは知らない、
ということを知っているならば、
あなたはすでにたくさんのことを知っている。

イデトモタカ(2012年2月8日)