あそこに行けば・・・。

クリスマスの夜、街中を急ぎ足で歩いていると、
前から男女2人が仲良さそうに談笑しながら歩いてきて、
聞き耳立てたわけではないけれど、ちょうどすれ違いざま、
男性がこう話しているのが耳に飛び込んできた。

「あそこに行けば絶対うまいもん食える」って店があってね・・・

ほんっとになんてことないことばなのだけれど、
なんだかこの言葉が耳に残って、目的地までのあいだ、
ぐるぐると、考えるともなしに考えながら歩いていた。
「いいなあ。わたしもそのお店みたいな人になりたいなあ。」
そんなことを思いながら。

わたしにも贔屓にしている店はあって、
「あそこの店はおいしいぞ!」と思っているし、
実際友人にはそう言ってすすめている。
けれど、それにしたって
「絶対うまいもん食える」
っていう賛辞にはまったく及びもつかない。

わたしが「おいしいものが食べたいな」と思うときは、
ほとんどの場合誰かと一緒にいる時で、
自分がおいしいと思うかどうか以上に、
その一緒にいる人においしいと思ってほしい。
そんなときに「絶対うまいもん食える」店ほど
信頼の厚い対象ってないよな、と思う。

これは食べ物だけではなくて、
なにかにつけて言えることなんじゃないだろうか。
「あいつに頼めば絶対なんとかしてくれる!」とか、
「あの子に相談したら絶対いい解決策が見つかるよ」とか。
そんなに信頼されている人を想像してみてら、
ふと「一所懸命」ということばが浮かんできた。

さっきのお店で言うならば、そこまでの信頼を得たのは、
これは想像でしかないのだけれど、きっと、
手を抜いたり、「これぐらいでいいか」とあきらめたり、
そういうことを一切してこなかったからなんだろう。
お仕事や人付き合いにおいても同じで、
いつも今いるところに一所懸命で、
目の前の仕事やものごとに一所懸命取り組んでいる、
そんな人がそれほどまでの信頼を得られるのかもしれない。

この1年を振り返り、わたしはそんなにも
目の前のこと、今いるところに一所懸命だっただろうか、
なんて反省をしながら、先の男性のことばを思い出している。
人の評価を気にしたって仕方がない、とは思うけれど、
でもせめて自分くらいはわたしのことを、
完全に信頼できる相棒だ、と思いたいじゃない?

来年も大好きな人たちと、大好きだと思い合い、
おいしいものを一緒に食べたり、
バカなはなしで笑い合ったり、
一所懸命仕事したり、相談したりされたり、
そんな毎日を送れたらいいなと思う。
そんなおいしい時間を一緒に過ごしたい、
そう思ってもらえる人でありたいと思う。

今年もあとわずか。その残る今年を一所懸命生きよう。
そんな毎日を積み重ねた人だけが
他人や自分自身から与えられる賛辞が、
「絶対うまいもん食える」ってことばなんだと思うから。

河村羽美(2012年12月29日)

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