軸がなけりゃ・・・。

わたしは谷川俊太郎さんの書く文章が好きだ。
詩や絵本をたくさん書いていらっしゃるのだけれど、
その中でもとりわけ好きなのが
『すこやかに おだやかに しなやかに』という詩集である。
収められている詩もいいのだけれど、何がいいって、
この「タイトル」が好きなのだ。

今よりもう少し若かったころは、
仕事をする上で、男の人には負けたくない、と肩肘張って、
強くあるために「ブレない軸が欲しい!」と願った。
そう願うあまりに、勘違いして、
間違えてできた軸のようなものを
曲げることができなくなって、
ただ頑なに意見を主張しているだけだった。
本屋さんでこの本を目にした時、
なんだか目が覚めたような気がしたのを覚えている。

以来、すこやかに、おだやかに、しなやかに、
そう思いながら生きてきたけれど、
しなやかではなく、ブレてるだけじゃないのかい?
と自分にツッコミたくなる瞬間も多々あって、
ひとまわりほど歳上の女性に「ブレない軸が欲しいんです」
と何気なく相談したことがあった。
そのとき彼女はこともなげにこう言ったのだった。

軸がなけりゃブレようもないじゃない?

彼女は多くは語らなかったけれど、
ブレてるな、と気づいている時点で軸はそこにあり、
その軸のブレをたくさん感じて、受け入れて、
ひとはしなやかになっていくのだ、と言われた気がした。

ブレるってどういうことなのか。
よし、こうしよう、と決めたことがあったのに、
誰かに何かを言われたり、言われそうだと思ったら、
わりと簡単にそうだなぁと思って考えや行動を変えてしまう。
あるいは、決めたはずなのに迷ってしまうような状態。
そもそも、いちどは何かしら決めている、ということだ。
きっとそこに何らかの基準はあっただろうけれど、
その選択に自信がなくなる、それが「ブレる」正体なのだ。

はじめから何も決めなければ流される。
流されて生きるのも悪くはないかもしれないが、
まぁそれはちょっと置いておいて、
ブレるってことは、一度は決めているのだ。
その基準にもっと自信を持てるようになれば、
たとえ考えや行動を変えたとしても、
それは素直、柔軟、つまり、しなやか、
と表現されるものになるのかもしれない。

しなやかである方が、まっすぐ硬いことよりも強い、
だから強くなりたくてしなやかにあこがれた。
けれど、大切なことを大切にできることが
ほんとうの強さなのではないかと近頃思う。
そして、何が大切かわかっている人は、
それを基準に選択するのだから、
それはブレではなくて、結果的にしなやかなのだ。

なんて、いい歳してブレてる自分に言い訳してみましたが、
ちょっとずつしなやか方面へ近づいていると信じて、
大切なことを、大切な人を、なにより大切にできる、
そんな選択をたくさんしていこうと思う。

河村羽美(2013年7月10日)

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