太ると肥えるは・・・。

昔から、なぜかよく人から食べ物をいただく。
特に母親ぐらいの年代の方からいただくことが多くて、
「ちゃんと食べてる?」というお言葉も
たいていの場合はセットになっている。
つまり、ちゃんと食べてないように見えるらしいのだ。

生まれてすぐから母乳を拒否したため、
赤ちゃんのときに必要な栄養が不足していたのか、
子どもの頃はほんとうに“痩せぎす”だった。
その頃は食べても食べても太らなくて、
痩せてることがコンプレックスだった。

残念ながら、今は、食べたら太る。
もう“痩せぎす”ではないとも思う。
痩せてることがコンプレクスだったくせに、
そうなると、今度は太るのが怖くなる。
とはいえ、意識して食事制限するわけでもなく、
なんとなく「これ食べたら太るかな〜」なんて
不健全な気持ちで食べているときも多いかも。

先日食事に行った時、その店のおかみさんに
「ちゃんと食べてるの?」と言われたことがある。
初対面なのに、である。
どうもわたしは「ちゃんと食べてない顔」らしいのだ。
ちゃんと食べてはいるけれど、太るのは怖い、
なんてことを話したら、こう言われた。

太ると肥えるは違うのよ。
ちゃんと食べて、もっと肥えなさい。


肥えるというのは身になる、増える、ということ。
教養も人との出会いも全部が肥やし。
肥やしをあげて、ちゃんと耕して、肥えた土にするみたいに、
あなたもちゃんと肥えなさい、と言われたのだ。

仕事柄、人との出会いは多いほうだ。
学ぶ機会も気づきも、そこそこにはあると思う。
でもそれは、自分の努力によるところよりも、
まわりの環境によるところのほうが随分多くて、
その環境に満足して終わりだったような気がする。
肥やしだけたくさんあってもしようがないのだ。
ちゃんと耕さなければ肥やしは生きない。肥えない。

あのとき、おかみさんがそこまで見通して
そう言ってくれたのかどうかはわからない。
けれど、少なくとも、食べることに関しては、
罪悪感持ったりしないで、もっと美味しく食べなさいよ、
と言いたかったんじゃないかと思う。
げっそり痩せているわけでもないのに、
いろんな人から「ちゃんと食べてる?」って聞かれるのは
何かしら健全さが足りないに違いないのだしね。

出会いや学びで人生が変わるのは、
それによって行動が変わるからなのだ。
どれだけ機会が多くても、自分が動かなければ
結果は何も変わらないのだ。

「おいしそうに肥えた人」になりたいと思う。
いろいろ思うことはあるけれど、
とにかくごはんはおいしく食べようと思う。

河村羽美(2013年10月15日)

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