<好きな人、好きだった人。>

この国には、星には、
結婚して、子どものいる夫婦が
たくさんいます。
それぞれにいろいろな事情を抱えながらも、
たいていは、好きな人、好きだった人と
結婚して、これからもずっと、
それなりに安心して、
一緒にいられるようになったわけです。
これは、当たり前のことのようで、
実のところは、
世界一の幸せものだともいえます。

結婚した夫婦の、
男の人、女の人、そのどちらにも、
その陰で、
その男の人、女の人のことが好きだったけど、
もしかしたら、結婚した相手の人よりも、
うんとずっと好きの気もちは大きかったけど、
けれど、結婚できなかった、
一緒になれなかった人というのがいます。

電車に乗っていると、
街を歩いていると、
幸せそうな夫婦、幸せそうでない夫婦、
それぞれに出会います。
そのどちらにも、その旦那さんと、その奥さんと、
結婚できなかった、一緒になれなかった、
その人のことが好きだった人の影を見つけます。

いまはもう好きじゃないかもしれないし、
もしかしたらいまでも好きかもしれないし、
それはわからないけれど、
人はいろんな人を好きになって生きています。
そして、じぶんの好きと相手の好きが、
幸運にも重なったとしても、
ずっと一緒にいられるとは限らないから、
人は、かなしんだり、寂しくなったりして、
音も立てずに泣いたりするのだと思います。

いよいよ冬ですね。
寒くなると、こころがちょっと、繊細になります。
ぼくらの歴史は、ひとの歴史は、
好きな人どうしの歴史です。
その人たちの子孫が、ぼくたちです。
けれど、その陰に、
好きなのに、一緒になれなかった、
もっと多くの人たちの歴史があります。
それも同じように、ひとの歴史だと思うのです。

冬は、なぜかそういうのが、
少し見える季節です。
空気が澄んでるからかもしれません。
あたたかい詩(うた)をうたいたいなぁと思います。

イデトモタカ(2011年11月15日)