<返せないもの。>

貸したものが返ってこない、
というのは困ったものですが、
それ以上に、
借りたものを返せない、
というのは、もっとうんと、
苦しいことなのです。

貸したものが、
どんなにかじぶんにとって
大切なものだったとしても、
いまじぶんはそれがなくても
どうにかやっていけてるわけだから、
諦めることも、忘れることも、
仕方ないさと笑うことも、
案外できるものなのです。

けれど、
借りたものを返せない、
返す意志もチカラもあるのに、
その術がないというのは、
その借りているものがどんなものであれ、
大事なものであれつまらないものであれ、
ひじょうに辛いものなのです。
いいようによっては、
迷惑なものなのです。

モノだけでなく、
恩にしても、情けにしても、
それを与えたほうは、
返ってこなくたって、
ぜんぜん平気に笑ってられます。
でもそれを、
返したくて返したくて返したいのに、
そのときにはもうその術がないほうは、
うんとずっと悲しいものです。

そうやっていちばん返したかった相手に
返せなかったバトンをどんどん受け継いで、
出来上がったすてきすぎるこの世界です。

イデトモタカ(2012年4月20日)