<いいたいから。>

ほんとはこんなこと、
わたしだっていいたくないんだけどさ。

というのは、うそつきのセリフです。
「いいたい」から、いうんです。
その「いいたいじぶん」を、
ただかばいたいだけなんです。
その「いいたいじぶん」を、
あなたがいわせたんだからねと、
相手のせいにしたいのです。
だってほんとは、
いいたくていいたくていいたくて
たまらなくて結局いうわけなんですからね。

さっといっちゃえば、いいじゃない。
かしこまらずに、ふつうのトーンで、
いっちゃえばいいじゃない。
それが許される関係性なら、
わざわざじぶんを保護しなくても
いいじゃない。

自己弁護のための枕詞は、
ほかにもたくさんあるものです。
もしかしたら、
つつましさや、奥ゆかしさを重んじて、
不躾なことをよしとしないこの国には、
そういうことばが他の国よりも、
うんとずっと多いのではないかと思います。

ほんとはこんなこと、
わたしだっていいたくないんだけどさ。

その前置きがあったなら、
嫌なやつにならないとでも
思っているのかしらん。
そのことばを先にいってれば、
いろいろとセーフになるとでも
まさか夢見ているのかしらん。

だれだって、
小言をいう人は好きじゃないです。
けれどだれだって、
じぶんの嫌なことを相手がしたときに、
ひとこと物申したいことだって、
あるものです。

そのときは、
いうか、いわないか。

いうなら、スマートにね。
いわないなら、すっかり忘れて、ね。

イデトモタカ(2012年5月6日)