<死なないもの。>

人間はいつか死ぬけれど、
人間性は不死である。
そういうことばに出会いました。

ピカソという人間はもういないけれど、
彼の人間性は、絵というかたちで
まだこの世界に生きています。
モーツァルトという人間も、
もうずいぶんと昔にいなくなってしまったけれど、
彼の人間性もまた、音楽という状態で
いま生きているぼくらをよろこばせたり、
なぐさめたりと、影響を与えてくれます。

ぼくの好きなサガンにしたって、
少なくともぼくが生きている限りにおいては、
彼女の作品に宿された人間性は
ぼくの世界に存在しつづけます。

そしてこれは、
ぼくらにしたっておなじことなのでした。

いま生きているぼくと、
いま生きているあなたが関わることで、
ぼくらは互いに「不死」をつくりだします。

ぼくはあなたに、
ぼくが死んでも死なないものを、渡します。
あなたもぼくに、
あなたが死んでも残るものを、渡してくれます。

そうやって、
いつか死ぬ人間は、
いつか死ぬ人間と出会い、関係し、
そのあいだに「死なないもの」を生みだします。

顔も、名前も、知らないけれど、
そうやってぼくは、あなたは、
ぼくらを育ててくれた人たちを、
育ててくれた人たちを、
育ててくれた最初の最初の人たちの、
「人間性」を引き継いで生きているのでした。

人間はいつか死ぬけれど、
人間性は不死である。

ぼくらは生きて、死に、そして、死なないんだ。

イデトモタカ(2012年5月25日)