<死人に口無し。>

ひとりの夜に含まれる寂しさは
連絡を待っている者同士が生み出す
ふたつの沈黙のせいかもしれない

待つということは
願うということだ

じぶんの気持ちを殺して待つのは
厄介者にも滑稽者にもなれないからだ
つまり死人が口を出してはいけない
と思っているからなのだ

わたしのなかであなたの存在は息づいている
それがどれほど真実だとしても
あなたのなかでわたしの存在は忘れられ
既に舞台から降りている人物だとすれば
わたしは死人も同然になる

死人は口を持たないものだ
もういない存在なのだ

だから待つことしかできない
そうではないと願うことしかできない
死んでいるかもしれないじぶんから
連絡することなど不可能なのだ

ボタンひとつで己の生死がわかるのに
その指が動かないのが恋なのだ

待つということは
願うということだ

ひとりの夜に含まれる切なさは
死を暗に拒む者同士が紡ぎ出す
ふたつの静寂のせいかもしれない

イデトモタカ(2013年9月9日)