<ある車内での寓話。>

「イデくん、あのな、人間っていうのはな、
あらゆる動物のてっぺんにおるっていうけど、
いっこだけ、アカンとこがあんねん。
それは、他の動物にはなくて、
人間特有のものやと思うんやけど、
それだけはな、人間の方がダメなところや。

ライオンでもチーターでも、
じぶんの腹が減ってたり、家族を食わすために
他の動物を獲るやろう。
でもな、それ以外のときやったら、獲らんのや。
腹いっぱいのときは、絶対にせえへん。
つまり、必要以上には獲れへんねん。
脳がな、そういうふうにできてんねやと思う。

テレビで見たことあるけど、
ほんまにな、ライオンでも、満腹のときは
じぶんの目の前を、目の前やで、
シマウマとかアルパカとか歩いてても無視や。
びっくりするやろ。
人間やったら間違いなく獲るで。
でもそこにな、落とし穴もあんのや。

この前うちの従業員の一人がな、
給料を一万円、前借りさしてくれって言うて来たんや。
おれは、ええけど、どないしたんや?って訊いたら、
携帯代が払えんくて、携帯が止まった言うねん。
だから、そうか、携帯代はいくらやねんって訊いたら、
七千円ですって言うんやんか。
そんときにおれ、ああ、これやって思ったんや。

七千円足りへんねやったら、七千円だけ借りたらええやん。
でもな、人ってな、不思議と多めに借りんねんな、これが。
サラ金地獄にハマった子らなんかも、みんなそうやんか。
どこそこに十八万払わなあかん金が無いからって言うて、
十八万やなくて二十万借りてくる。
今度は、その二十万返すために、別のところから
多めに借りんでもええのに、二十二万借りてくる。
その次は二十五万借りて、ってなるんやんか。
こんなアホなこと、動物はせえへんで?
でもな、人間はしてまうんやな、これを。

あらゆる動物のてっぺんいうて威張ってる人間がやな、
下に見とる動物もせえへんようなダメなことをする。
本来なら、もっと智恵があるっていうんやったら、
もっと上等なことせなあかんやろ。
つまりな、用立てなあかん金が十八万あったとして、
他の動物がよそから十八万ぴったり借りてくるんやったら、
人間はちょっと少ない十六万だけ借りてきて、
残りの二万を自力でなんとかしなあかんのや、ほんまは。
日雇い行くなり、持ってるもの売るなりして、
どうにかこうにか足りへん金をつくらなしゃあない。

でもな、それができたらな、次十六万返すときに、
借りてくるのはまた十四万でええんや。
それでまた、足りへん二万はなんとかする。
そうやっていったら、必ず返す金はなくなるんやから。
じぶんの力が加わる分だけ、減っていくんやから。

まあな、実際、そのときが来たときに、
うちの従業員の立場にオレがなったときに、
果たして今言ったことが地でできるかいうたら、
わからんで、たぶんちょっと、揺れると思う。
でも、そういうことをオレは常に考えてるから、
きっとやったるという自負もある。
体が丈夫で動くうちはな、やったろう思う。」

イデトモタカ(2013年11月8日)