<香水の詩。>

あなたの首筋から、体から香水の匂いがする。
それはあなたがこれだと認めて
どこかから借りてきた匂いだけれど
それでもわたしにとってはすでにあなたの匂いだ。

あなたはたったひとりの人だから
あなたの香水をつけている人がいると
少しだけ腹が立つ。
もちろん売っているのだから
だれだって平等に買うことはできるのだけれど
けれどあれはあなたの匂いなのだ。

だれしもにだれしものあなたがいて
そのあなたがつけている香水があって
それを別の人の別のあなたがつけていることに
違和感を憶えてしまう。
ちがう、ちがう、あなたには合っていないと。
身勝手だけど、人間だから。

あなたがどこかから借りてきたあなたの匂い。
だからわたしもどこかから借りてこられる。
あなたは無理でも、せめて匂いは。
それは少しだけ、あなたに秘密で
あなたを買った心もちがして
背徳的で誇らしい。
知らないのは、あなただけだから。

お金であなたは買えないけれど
あなたの匂いはお金で買える。
それはなんだか文字にしてみると
ひどく妖しくイケナイコトに思えるけれど
なんてことはない、ただの事実なわけで。

あなたの首筋から、体から香水の匂いがする。
その香水を、匂いを、わたしはこそっと
じぶんの手首に、首筋にかけてみる。
数秒も経たないうちに、あなたの匂いがして
わたしは満足して眠る。

イデトモタカ(2014年1月31日)