<キャプテン。>

船長のいない船はいたるところにある。
乗り込んだ船に、船長がいないことに気づくことがある。
そのとき「とんだ貧乏くじだ!」と思う人がある。
そのとき「船長になるチャンスだ!」と思う人がある。

船長のいない船はたいてい難破する。
みんなが責任回避して指示を待っているうちに、
望んでもいない場所に流されて、ぷかぷか無駄に漂う。

船長のいない船で船長に名乗りを上げると、
やたらとやることがあるのに気づく。
そこで残念な船の乗組員に戻ることもできるけれど、
やってやろうと船長としての仕事を始めたなら、
船はいつかあなたの望んだ場所に着く。

ぼくらは同時に何艘もの船に乗っている。
船長のいる船もあれば、いない船もある。
あなたが船長の船もある。

車は何もしなければ動かないけれど、
船は何もしなくても波に流されていく。
ぼくらが乗っているのは車ではなく船なのだ。
あなたが何もしなくても、船が勝手にあなたを運ぶ。

これは私の船だと胸を張っていえる人は幸運だ。
その人はじぶんの望む場所へ進んでいる。
もし辿り着かなかったとしても、
航海の時間は充実している。

ここでは私が船長だといえる船がない人は、
たぶん何かを勘違いしている。
船はいたるところに浮かんでいるのだ。
船長不在の船ばかりが漂っているのだ。
あなたがその気にさえなれば、
船はいつでも船長を待っている。

イデトモタカ(2015年6月4日)