<凡人讃歌。>

人は特別でありたがる。
この世界でたった一人のじぶんでありたがる。
だからこそ意味があるのだと信じるように。

人は特別でありたがる。
そこにじぶんの価値があるかのように。
けれど特別であればあるほどに
人は孤独の深みに落ちていく。

特別であるということは
誰にも似ていないということは
「仲間はずれ」だと気づくことになる。

それでも人は特別でありたがる。
この痛みはじぶんだけのものだと確信する。
この辛さを知るものは他にいないと嘆く。

ところがあるときじぶんのこの特別を
軽々と超えてくる存在を知る。

ときにそれは音楽で
ときにそれは小説で
ときにそれは映画で
ときにそれは伝記で
ときにそれは他人の存在。

じぶんしか知るはずのない特別な痛みを
同じように知っている人がある。

じぶんしか知るはずのない特別な辛さを
同じように体験している人がある。

そして人は特別感を一つ失い
孤独が一つ癒される。

じぶんの特別感をことごとく失った人間は
決して凡庸な人物ではない。

世界のあらゆる痛みや辛さを知る賢人なのだ。

イデトモタカ(2015年6月25日)