<高く高く。>

こころのなかに誰かを住まわせている人は、
ときに強くもなり、弱くもなる。
死んだ父親を、あるいは尊敬する師匠を、
こころのなかに住まわせている人は、
ここはというときに、ああ、父が見ている、
師匠が見ていると「感じる」ことで、
馬鹿なまねをしないで済むかもしれない。
越えてはいけない一線を前に、
踏みとどまれるかもしれない。

こころのなかに誰かを住まわせるのは、
けれどいいことばかりではない。
望まずとも住み着いてしまっている存在もある。
たとえば学生時代のいじめっこの視線を、
数年、十数年経ったいまでも「感じて」しまい、
調子に乗っていいところで乗れなかったり、
不利になったとしても、目立たないように
じぶんを抑えてしまうことだってあるかもしれない。

あなたのこころの家主はあなただ。
好きな人を住まわせて、嫌いな人、
苦手な人は追い出してしまえばいい。
なかなかそうできないかもしれないけれど、
選択権はあなたにあって、あなたの自由なのだ、
ということは、忘れないほうがいいと思う。
勝手に住み着いて、忘れさせてくれない人。
いつまでも居座って、出ていってくれない人。
けれど本当は、あなたが引き止めている
という可能性もなくはない。
こればっかりは、こころのなかのことだから、
一概にこうだとはいえそうにない。

いい人、尊敬する人に、住んでもらおう。
嫌な人、邪魔する人には、出ていってもらおう。
住まわすよりも、出ていかせるほうが、
うんとずっとむつかしい。
傷は治っても、傷口は消えないときもある。
縫合痕は永遠にのこるかもしれない。
それでもあなたは自由になれるのだ。
なっていいのだ。
追いつかないくらいに、高く、高く、上へ、空へ。

その原動力になってもらえばいい。
高いところから見る景色は、はじめてで、
きっと素晴らしい。

イデトモタカ(2016年7月2日)