<16階から飛び降りる。>

『ともだちの とびおり』

 どもだちが ビルの九かいからとびおりた
六かいのテラスで はずんで
三かいのひさしに はねかえり
一かいのうえこみに おっこって
ほっぺたと むこうずねを すりむいた

 ともだちはエレベーターで 九かいにもどり
びんせん三まいのかきおきを よみかえす
てにをはが三かしょ まちがっていたので
とりあえずそこを かきなおし
こんどは十六かいまで かいだんにのぼり
もういちど とびおりた

 十二かいで はねがはえ
十かいで かぜをとらえ ともだちは
よぞらを ゆったりとせんかいした


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谷川俊太郎さんの作品です。
この詩をみせると、こわいという子もいます。
けれどぼくは、はじめて読んだとき、
感動して震えました。
映像が鮮明に、ありありと見えました。
そして、最高だな、と思いましたっけ。

ギリシャ神話に登場する、
エロスとタナトスという神様をご存知でしょうか。
エロスは「生」を擬人化した神、
タナトスは「死」を擬人化した神といわれています。
これらは心理学の世界では、それぞれ

エロス=自己保存本能
タナトス=自己破壊に向かう死の本能

というような意味を表す用語として
フロイトが名付けています。

「生」と「死」が裏と表の関係であるように、
「成長」と「停滞」もまた、表裏一体だと思うのです。

いまのままで生きることは、けれど停滞で。
いまのじぶんを破壊することは、危険だけれど成長に。

それを感じさせてくれた詩のような気がします。

大丈夫、飛んでみな。
案外なんてことないかもよ、って。

イデトモタカ(2009年8月7日)