ESSAY
ホワイトデーの話。
2024-03-14
「カシミア」だった時代から、ほぼ時事的なことを書かないできました。意図的にそうしていたわけではなく、単に僕か疎いからと、興味がないからです。今日もなにも気にせず生きていましたが、近所のスーパーに鮮魚を買い出しに行っているときに、ケーキ屋の前を通ってふとホワイトデーなのだと知りました。「そうかそうか」と思いながら、698円でぷくっとしたメバルを買いました。魚は基本的にポワレか刺し身にします。ポワレにする魚のなかでは、ダントツでメバル(アカメバル)が好きです。
魚をおろすとき、包丁か、もしくはウロコ取りでまず魚のウロコを落とします。和食系の方々は、シンクのなかで豪快にウロコを飛ばしますが、洋食の人たちはある種より合理的で、魚を透明の袋に入れて、そのなかでウロコを落とす姿を目にします。僕は料理人ではないですし、弟子もおらず自分で掃除をしなければいけませんから、洋食の料理人に倣って袋のなかでウロコを取ります。
また、ウロコを取る前に、危ないのでエラやヒレなどは事前にすべてハサミで切り落としておきます。姿盛りや煮付けにするわけではありませんから、特に背ヒレなどはただただケガをするリスクがあるだけです。これも、洋食の方々の調理を見て覚えたことです。
魚をまるごと一匹買ってきて、自分でさばくと気づくことですが、自分の技術が低いほど、せっかくの部位を無駄にします。とりわけ、捨てるところがないと言われる魚の王様、鯛などは特にそうです。さばく技術や、料理の知識や力がないほどに、ほんとうは有効活用できたものを泣く泣く捨てることになってしまいます。なので、僕は鯛をさばくことは控えています。自分の力が追いついていないために、本当に無駄な部位を生んでしまい辛いからです。少しずつ他の魚で実力をつけながら、挑んでいきたいと思っています。
この事実は、他の分野でも同じです。例えば読書でも、多くの本で「どうせ読んでも数パーセントしか憶えていないのだから、はじめから重要な数パーセントの部分だけ読めばいい」といった論が展開されます。なるほど若かりし頃の僕もその主張に納得したこともありましたし、ある意味では数パーセントしか憶えていないというのは事実なのですが、けれどそれも、結局読み手の技術や力によるものだと感じています。本を読む力がつけばつくほど、有効活用できる内容は増えていきます(ただし、それだけの本であれば、ですが)。
めずらしくホワイトデーの話でもしようと思っていましたが、気づけば魚の話になっていました。昔から、ホワイトデーについて一つの思い出もありませんから、おそらく今後もそうなのだと思います。それよりも、今日はいいメバルが買えて良かったです。
では、また書きます。
新鮮な魚が食べられる国に生まれたことは、とても幸せです。
NEWS LETTER
イデトモタカの言葉の再定義
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辞書は「自分用」にはできていません。辞書を引けば言葉の一般的な意味はわかります。けれど、実際に「使える道具」として、新たな価値を生み出すためには、その言葉を磨き再定義する必要があります。ここでは僕が使いやすいように解釈、咀嚼し、再定義した言葉を紹介していきます。
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イデ トモタカ Ide Tomotaka
コピーライター
大学在学中からビジネスを行い、一度も就職することなくコピーライターとして独立。DRM(ダイレクト・レスポンス・マーケティング)の世界に没頭し、26歳のとき広告費10万円で7億円を売り上げる。現在は大企業を中心にインターナルレターの企画・制作、教育プログラムの開発を担う。株式会社letter 代表取締役。2023年3月、ぱる出版より『フリーランスで「超」成果を上げる プロジェクトワーカーとしての働き方』を上梓。