ESSAY

2020-10-24

奇跡が余ってる。

彼は言った。
「いま世界には、奇跡が余っている」
と。

ぼくは問うた。
「どういうこと?」

「仮に世界の奇跡の数は一定だとする」

この時点で意味がわからないけど、とりあえず聞く。

「いまの時代、多くの人が<予想できそうな>未来を選択する。安定した、大きくは変わりそうにない道を好んで選ぶ。その結果、<ありえないこと>が起こらなくなる」

そうだね。そうかもしれない。

「そうすると、奇跡が余る。みんなが一生に一度か二度経験するような奇跡を、体験せずに人生を終える人が増えている」

なるほど。

「その結果、おれらみたいな<なにが起こるかわからない道>を望んでいく人たちに、奇跡がばんばん回ってきてる。おれなんて、年に一回くらいのペースで、一生分の奇跡と思えるような出来事が起きてる。これはたぶん誰か他の人の分の奇跡だったはずだ」

ふふふ。ぼくは笑うしかない。笑うしかないのだけれど、妙に納得させられてしまう。そして彼をひどく愛おしくも思う。

ぼくも<なにが起こるかわからない道>を行こう。なにせ奇跡は余っているらしいのだから。

では、また書きます。
今晩もまた、幡豆にいる。

イデトモタカ