サヨナラと、エッセイだけが、人生だ。

  1. 800文字

目の告白

目には力があります。だからときどき、いや、よく、ぼくはその力に屈服します。目の力は強大で、少しでもこちらの調子が悪いと、すぐに圧倒されてしまいます。本能が避けて、逃げて、隠れようとします。

「目を見て話しなさい」「話しをするときは、相手の目を見なさい」どういうわけだか、少なくとも日本ではそれがマナーとされています。常識とさえ認識されていて、「なぜそうするのか」の明確な答えをもたない(良識的な!)大人が、子どもに脈々と教えつづけております。

告白しましょう。ぼくは(あまり)人と目を合わせたくありません。できるだけ目を合わせずに話をして、生きています。けれどぼくが大人になるまでに、今ぼくがしたような告白を、つまり「私は人と目を合わせたくない」ということを、白状してくれた人はただのひとりもいませんでした。

でもきっとそう思っている人はいるはずです。ぼくは「特別な人」でも「特殊な人」でもない、というのが自己認識なので、どうにも納得がいきません。調子がいいときは目を合わせられます。慣れた相手でも、目を合わせられます。でも気もちが平均を少しでも下回ると、親しかろうが目を見るのを避けたくなります。ストレスになるからです。好きじゃない音楽を強制的に、ずっと聴かされている状況に似た「嫌」がつもっていきます。

目はうつくしいです。目はすてきです。それゆえに、こころの調子が良くないと、途端に「しんどい」ものです。エネルギーがあるからこそ、こちらにもエネルギーを求められます(そしてそのエネルギーがぼくにはあまりないわけでして)。

正反対に、目を使いこなしている人もいます。文化的には歌舞伎をはじめとする役者や俳優がそうであり、商業的・実用的には相手を言い負かせたり、嘘を見抜く必要がある人たちがそのようです。目だけではなく、魅力があるものは同時に力があります。そして力の陰には常に、それを恐れる人がいるものです。(800文字)

では、また書きます。

800文字の最近記事

  1. 熱の差

  2. クリティカルな助言

  3. 冒険の記憶

  4. 目の告白

  5. 大人的な調整

関連記事

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

CAPTCHA


PAGE TOP