ESSAY

2011-11-15

好きな人、好きだった人。

この国には、星には、結婚して、子どものいる夫婦がたくさんいます。それぞれにいろいろな事情を抱えながらも、たいていは、好きな人、好きだった人と結婚して、これからもずっと、それなりに安心して、一緒にいられるようになったわけです。これは、当たり前のことのようで、実のところは、世界一の幸せものだともいえます。

結婚した夫婦の、男の人、女の人、そのどちらにも、その陰で、その男の人、女の人のことが好きだったけど、もしかしたら、結婚した相手の人よりも、うんとずっと好きの気もちは大きかったけど、けれど、結婚できなかった、一緒になれなかった人というのがいます。

電車に乗っていると、街を歩いていると、幸せそうな夫婦、幸せそうでない夫婦、それぞれに出会います。そのどちらにも、その旦那さんと、その奥さんと、結婚できなかった、一緒になれなかった、その人のことが好きだった人の影を見つけます。

いまはもう好きじゃないかもしれないし、もしかしたらいまでも好きかもしれないし、それはわからないけれど、人はいろんな人を好きになって生きています。そして、じぶんの好きと相手の好きが、幸運にも重なったとしても、ずっと一緒にいられるとは限らないから、人は、かなしんだり、寂しくなったりして、音も立てずに泣いたりするのだと思います。

いよいよ冬ですね。寒くなると、こころがちょっと、繊細になります。ぼくらの歴史は、ひとの歴史は、好きな人どうしの歴史です。その人たちの子孫が、ぼくたちです。けれど、その陰に、好きなのに、一緒になれなかった、もっと多くの人たちの歴史があります。それも同じように、ひとの歴史だと思うのです。

冬は、なぜかそういうのが、少し見える季節です。空気が澄んでるからかもしれません。あたたかい詩(うた)をうたいたいなぁと思います。

イデトモタカ