ESSAY

2012-02-05

恋の劇薬。

「わたしは、あなたにとって、何なんですか?」

こういう台詞って、云うほうも、云われるほうも、ものすごくどきどきすると思うのです。その理由は、相手の世界における「じぶんの役割」が知れてしまうから、なのでしょう。舞台でも、戯曲でも、映画でも、小説でも、それぞれのイメージしやすいものでいいですが、つまりそういった物語の主人公です、ぼくらは。シナリオはその身とこころ次第です。

ところが、ぼくが、あなたが、主人公を演じられるのは、ぼくの、あなたの、世界でだけです。あなたは、ぼくの物語においては、一人のある登場人物です。ぼくも、あなたの物語においては、一人のある登場人物です。そしてここで気になるのが、にんげんです。ぼくは、あなたの舞台に参加したけど、どういう役回りをもらえるの? わたしは、あなたの戯曲に登場したけど、いつかは去る通りすがりなの?

そう思うと、ぼくらはそれぞれに、じぶんを主人公とする台本以外にも、無数のストーリーに参加して過しています。そうすると、そこに、ズレが生じてきます。ぼくの世界での、ぼくとあなたの関係性と、あなたの世界での、あなたとぼくの関係性の、それぞれが望ましいと思う設定に食い違いがおきてくるのがふつうです。

失恋が切ないのは、じぶんの描いたシナリオが、認められなかったからではないかしらん。恋愛がうつくしいのは、二つの複雑な物語が繊細に、つながっているからではないかしらん。

わたしは、あなたにとって、何なんですか?

この質問は、お互いの世界に斬り込むことになるので、云うほうにも、云われるほうにも、覚悟と勇気が必要ですが、急速に舞台をととのえるような気がします。ここぞ、というときには、使ってみるのもありなのかもしれません。劇薬だけに、お取り扱いにはくれぐれもご注意ですけれど、ね。

イデトモタカ