ESSAY

2012-04-14

なにがダメなの。

夕暮れの帰り道、まだ小さいノラ犬が、くぅんという消えそうな鳴き声で、いまにも泣きそうについてきて、「ごめんな、でもダメなんだ。」とその仔犬にさとすようにいい、あるいはじぶんに言い聞かすようにつぶやいて足早に去っていく。脈なしだとわかるように。

実際には、ぼくにはそんな経験はないのだけれど、いまになって思い返すと、これに似たようなことは、あるいはしてきたのかもしれません。

それは、ある女の子かもしれないし。もしくは、小さな夢かもしれないし。うまく思い出せないだけで、いっぱいあったはずなのです。

ぼくのこころがぼくにいう。

「ぼく、小説家になりたい!」
(ごめんな、でもダメなんだ。)

「ぼく、ミュージシャンになりたい!」
(ごめんな、でもダメなんだ。)

「ぼく、あの人と一緒にいたい!」
(ごめんな、でもダメなんだ。)

なにが、どう、ダメなのだろう。それなりにオトナになって、いろんなことを、じぶんの意志で、自由に決められるようになって、それでもなお、なにが、どう、ダメなのだろう。

ぼくはもう、じぶんの意志と責任で、その仔犬を抱きかかえて、つれて帰ってもいい年齢になったのだ。いつの間にか、なっていたのだ。

人生を賭けたい夢が、生涯を共にしたい人が、もしそこで泣いていたのなら、謝って、あきらめないで、笑顔で抱きかかえていいんだぜ、ぼくよ。

イデトモタカ