ESSAY

2012-05-25

死なないもの。

人間はいつか死ぬけれど、人間性は不死である。そういうことばに出会いました。

ピカソという人間はもういないけれど、彼の人間性は、絵というかたちでまだこの世界に生きています。モーツァルトという人間も、もうずいぶんと昔にいなくなってしまったけれど、彼の人間性もまた、音楽という状態でいま生きているぼくらをよろこばせたり、なぐさめたりと、影響を与えてくれます。

ぼくの好きなサガンにしたって、少なくともぼくが生きている限りにおいては、彼女の作品に宿された人間性はぼくの世界に存在しつづけます。

そしてこれは、ぼくらにしたっておなじことなのでした。

いま生きているぼくと、いま生きているあなたが関わることで、ぼくらは互いに「不死」をつくりだします。

ぼくはあなたに、ぼくが死んでも死なないものを、渡します。あなたもぼくに、あなたが死んでも残るものを、渡してくれます。

そうやって、いつか死ぬ人間は、いつか死ぬ人間と出会い、関係し、そのあいだに「死なないもの」を生みだします。

顔も、名前も、知らないけれど、そうやってぼくは、あなたは、ぼくらを育ててくれた人たちを、育ててくれた人たちを、育ててくれた最初の最初の人たちの、「人間性」を引き継いで生きているのでした。

人間はいつか死ぬけれど、人間性は不死である。

ぼくらは生きて、死に、そして、死なないんだ。

イデトモタカ