ESSAY

2012-05-31

お金はこれくらいで。

対極にあるようなものが、実は紙一重の存在、コインの裏表のような関係にある、ということは、めずらしくないことです。バカと天才、愛と憎しみ、決断と逃げ……。最近、そういうぼくのひきだしのなかに、あらたに「謙虚と傲慢」が加わりました。その原因となった話を、ある会社の社長さんがしてくれました。

「ぼくのところにはよく、いろんな人が経営やお金儲けのことを聞きにくる。そういうとき、ぼくはいつも質問するんだ。いくらくらい収入(お金)がほしいの。するとたいていの人は、さもじぶんは謙虚ですという感じに、「私は年収800万円もらえれば充分です」とか、「年収1000万円、それ以上は望んでません」とか、ひどい場合は「じぶんと家族が食べられれば」なんてことをいう人もいる。確かに、年収1000万円は大金だよ。でも、事業をやっていれば、それくらいの収入になる可能性はいくらでもある。けれど彼らはそれで充分だ、それ以上の高望みはしないという。じぶんと家族が不自由なく暮らせるくらいの収入であれば、それでいいという。それは、どういうことかわかる? 彼らは、じぶんのことしか考えてないんだ。じぶんの幸せのことしか、頭にないんだ。つまり、傲慢なんだよ。本人たちは、それが謙虚だと勘違いしてるけどね。ぼくはいま、彼らの望んでいる金額よりも、多くの収入を得ている。でも、もっとほしい。なぜなら、幸せにしたい人、応援したい人、なんとかしたいことが山積みだからだ。正直なところ、じぶんの生活に関していえば、月に30万円、多くても40万円もあれば足りるよ。でもそれじゃ、じぶんの人生の面倒しか見られない」

ぼくはこの話を聞いて、じぶんの謙虚が、実は傲慢だったなんてこと、きっとたくさんあるなぁと思い知らされました。

パタゴニアというアウトドアブランドの創設者である、イヴォン・シュイナードさんは、じぶんの資産で自然の森林や渓流の土地を買い占め、開発や破壊がされないように保護しているそうです。日本ではイヴォン・シュイナードの親友、浜野安宏さんが同じようなことをされています。ハリウッドではブラッド・ピットさん、アンジェリーナ・ジョリーさんの夫婦が、さまざまな国の子どもの里親になっています。心底、すごいなぁと思います。

多くを得ることが傲慢、必要最低限しか得ないことが謙虚、なのではなくて、あくまでも重要なのは、問題なのは、それをどう使うのかという出口にあるのでした。そのことを学ばせていただいた、ある種とても興味深いお話でした。

イデトモタカ