ESSAY

2012-07-26

大切なものがふえるほど。

大切なものがふえるほど、守りたいものができるほど、失ったら困るものがあるほどに、人は「不安」になっていくものです。

ものごとは常にバランスをとっていて、なにかを得たのなら、そのなにかを失う不安もまた、手中におさめることになります。逆に、見落とされがちですけれど、なにかを失ったなら、それを守らなければという恐怖も、一緒になくなっているものです。

ぼくらは裸で生まれてきました。当然のことながら、なにももたずにこの世界にきました。それがいつの間になのか、失いたくない、失ったら困る、というものをたくさん握りしめていて、「不安」をうんと抱えて生きてたりします。これは、少し不思議なことです。

はじめは持ってなかったのに、その存在さえ知らなかったのに、ないと困るというのでした。とはいえ、それがわるいということでもなく、そういうものがあったからこそ、発展した文明や守られた歴史があるのだろうという気がします。

ただ、不安にはなるよ。とは思います。多くの人が幸せになりたい、自由になりたい、そう願って、そこを目指して生きています。つまり、安心したいのだと思います。そしてそれは、ぼくのことばでいうならば、たくさんのものを知りながら、なにも所有しない、持たない、あるいは持っているけれど、失っても構わない、困らない、という状態のことをいうのだろうと思っています。

なにかを手にすることは、いいことだと思います。それがモノにせよ、空間にせよ、地位でも感情でも。持たなければわからないことは多いものです。でもそれにこだわらず、無理に引きとめようとせず、流れに身を任せられるかどうかが、いわゆる自由に生きるための鍵のような気がします。

そのあたりのバランス感覚を、じょうずに養っていきたいなぁと思います。

イデトモタカ