ESSAY

2012-12-04

正義の二重構造。

二重世界、三重世界、なんと表現するのが正しいかわかりませんけれど、この世界というものの多くは陰で、人によってこんなにも景色が違うのかと、ここのところ驚いてばかりです。

ある人は黒だといい、ある人は白だという。ややこしいことに、そのどちらも「嘘をついていない」という、有り得ないことが起っているのがこの世界です。

つい先日観に行った小林賢太郎さんの舞台で、「正義の反対は悪じゃない。正義の反対は、もう一方の正義だ。」というセリフがありました。誰もが息をのみました。ああ、そのとおりだという、聞こえない声が聞こえたような気がします。つまり、誰でもないぼくらの声を、代弁しているように思えたのでした。

ぼくらの誰も「間違って生きよう」とは、思ってはいないわけなのです。どれだけ道理が違うと見えたとしても、それは違うでしょうという言動をしていても、本人にとっては正しい、あるいは正しいには及ばなくとも、そうせざるをえないがゆえに、そうしている、ということばかりなのです。

彼の世界とあなたの世界、そしてぼくの見ているこの世界、どれも似ているようでぜんぜん違う。それぞれがそれぞれをうまく説明しているようで、まったく的外れな思い込みというのが関の山。そんなことがあちらこちらで起きています。

正義の反対は悪じゃない。正義と正義の二重構造。それが「実際の」世の中なのでした。不気味におもしろい。世界のブラックユーモアな部分というのは、世界の素の側面そのもののような気がします。

イデトモタカ