ESSAY

2013-03-22

抱かれているその感情に。

『名もなき関係。』は、ぼく自身がだらしないというか、実際にそういう状況のときに書いたものです。ぼくは恋愛があまりじょうずではないようで、どうにもならないことに、これまでよくなってきました。

けれど、相手のことを「好き」ということは、そういう「状況」や「しがらみ」とは、関係がないのだということに、あるとき気がつきました。

じぶんのなかの「好き」という感情に、嘘をつくことはないと思っています。だからといって、その「好き」の成就を望む、求めるものを手に入れようとするということは、これまた、違うことなんですよね。

かけがえのない存在がいる、ということは、世界に彩りが与えられ、幸せなことだと思うのです。けれど、失ったら困る人がいる、ということは、じぶんのこころも人生も苦しめてしまいます。

いま抱かれているその感情に、ふたりの未来や状況や関係性でなく、「愛おしい」というその感情の持ち主がじぶんだということに満足できるようになればいいですね。

求めることは、手に入れることの第一歩かもしれませんが、手放すことは、失わないことへの第一歩です。

もっとも辛い生きかたというのは、手に入らないものを求めつづけることだと思います。

季節が留まらないように、世界は刻一刻と変わっていきます。ぼくらも一秒ごとに歳をとり、じぶんを取り巻く環境も、見えない単位で動いています。「変らないこと」はなく、それは求めてはいけない対象です。だからこそ、人はそれを「愛おしい」と思います。

執着しなければ、依存しなければ、比較しなければ、期待しなければ、あなたのその「愛おしい」は、人生からのプレゼントです。けれど、それがなくならないことを求めたら、じぶんの統制下に置こう、手に入れようと思ったら、いつか来る行き止まりの名は不幸です。

どうにもならないことが多い世界ですけれど、感じることは自由ですので、その状況を、あらゆる環境を、「愛おしい」と感じられるといいですね。いつか来るかもしれない別れのときも、最後のときも、それらも含めて「愛おしい」と思えればいいですね。

(あるメールへの返信)

イデトモタカ