ESSAY

2013-07-08

青い鳥のことば。

本に書いてあることというのは、それがぼくら読む人の手元に渡るまでにたくさんの目が通っている分だけ、そうでない誰かがどこかに書いたものよりかは「間違いでない」ことが多いはずです。けれど一方で「残る」という特性上、いつまでも、もういない人のことばでさえもふれることができるという利点と同時に、どこかおなじ空気感の中にいない人のことばという面もたしかに存在します。

ぼくは本を否定しません。大好きなものです。それを前提として読み進めていただきたいのですけれど、やっぱりもっとじぶんの身近で輝いている人、かっこいいと慕える人のことばに耳を傾けるほうが、よっぽど得られるものは多いんだと思っています。それが「生きたことば」であることに、相違ないからです。

あなたにそのとき(今)ほんとうに必要なことばは、あなたの生活圏内で消費されることばです。あなたの人生圏内で価値を発揮することばです。それは、青い鳥のように、実は目の前で披露されている舞台のどこかに、遠くではなく身近な場所にあったりします。

料理屋さんで師匠から弟子へと受け継がれているもの、包丁の使い方や礼儀、心得、素材に関する真贋などは、本屋で売っているものではありません。似たようなことばは探せても、100パーセントぴったりなものはないのです。それは、いつも顔を合わせている師匠だけから学べるものなのです。

師匠よりすごい人、本を出せるような人は、もしかしたらたくさんいるかもしれません。けれど「あなたがすごいと思う」その師匠は、本が一冊もなくとも、世間では知られていなくとも、あなたに必要なことばを持っている人に違いはありません。

あるいは父親でも、近所の先輩でも、恋人でも、親しくしてくれているどこかの誰かでも、あなたが本に求めていることばを実は容易く持っているものなのです。聞けば答えてくれるものだったりするのです。

一流の人のことばというのはあります。特殊な環境だからこそ持てる説得力や見える景色です。それももちろん貴重です。でも、みんななにかしら生きているなかで、「これだけはたしかなんだ」と言えるものがあるものです。たった一つだとしても、あるものです。そしてじぶんに必要なことばというのは、案外そういうことばだったりします。なぜなら、おなじコミュニティにいるからです。おなじ時代に生き、おなじ空気を肌で感じながら、おなじ環境にいる人のものですから。

それをぼくが云うのは説得力がないかもしれませんが、おなじ時代を共に生きながら、なんとか希望を持ちたいと未来を見ている身としては、ニーチェやゲーテよりもあなたに近いことばは持っていると思っているんですけどね。

イデトモタカ