ESSAY

2013-10-13

3から10の発想術。

昔プロのデザイナーにデザインの「いろは」を教えてもらうという機会があって、そのときの経験は今でもぼくの人生でとても役に立っているのですが、そのときにいちばん衝撃を受けたのが、まずは既存のもののなかからカタチを選ぶ、というスタンスでした。

たとえば、チラシでも、ウェブサイトでも、いろいろな資料や作品集を片っ端から見て、今回はこのデザインのこういう感じと、この作品のこういう部分を混ぜた雰囲気にしよう、と、あからさまに、わるびれた様子もなく、堂々と言うのでした。当時、まだ二十代前半のぼくは、広告業界のひよっことして、商業デザインはアートではない、ということくらいは重々了解しておりましたが、俗な表現をすればプロのデザイナーがこうも当たり前のように「パクる」という発想は、まぁ驚いたのでした。

けれど、すべての人がそうではないでしょうが、先のデザイナーのやり方のほうが一般的であり、むしろスタンダードなのだと知っていくにつれ、ぼくのなかの価値観は大きく変化しました。

先日も、情熱大陸という番組にグッドデザインカンパニーの水野学さんが出られている回があり(くまモンの生みの親)、たのしみに観ていたのですが、彼のデザイン事務所でもやっぱり、新しい案件(東京みやげのお菓子のパッケージデザイン)に若いスタッフと一緒に取り組んでいるとき、みんなで過去のいろんなデザイン集を読み漁っていて、そして「この感じいいね」と議論していました。日本トップクラスのところでもそうなのですから、もうこれは、そういうものなのだと確信しました。

そういえば、くまモンのホッペタの赤いのは、大人気ポケットモンスターのピカチュウからちょうだいしたのだそうです。

言うまでもないことですが、オリジナリティなんて必要ないなんて言いません。けれど、0から1を、まったくの無から有を生むことは、非効率的な上に完成度も低いのでした。それは、過去に生きてがんばった人たちの功績を、無視するということで、種全体の進化でいえば、間違っているといえるのかもしれません。

ぼくは守破離というものをとても大事にしておりますが、既にある優れたものに頼る、という姿勢を、もっと積極的に採用していかないとなぁと思いました。たしかに、ぼく自身も拙いデザイナーとしてなにかのデザインをするとき、頼りにする、参考にするものがあるときのほうが、確実に「いいもの」ができているんですよね。過去を踏み越えて、なにができるか、なわけですから。

イデトモタカ