ESSAY

2013-11-08

ある車内での寓話。

「イデくん、あのな、人間っていうのはな、あらゆる動物のてっぺんにおるっていうけど、いっこだけ、アカンとこがあんねん。それは、他の動物にはなくて、人間特有のものやと思うんやけど、それだけはな、人間の方がダメなところや。

ライオンでもチーターでも、じぶんの腹が減ってたり、家族を食わすために他の動物を獲るやろう。でもな、それ以外のときやったら、獲らんのや。腹いっぱいのときは、絶対にせえへん。つまり、必要以上には獲れへんねん。脳がな、そういうふうにできてんねやと思う。

テレビで見たことあるけど、ほんまにな、ライオンでも、満腹のときはじぶんの目の前を、目の前やで、シマウマとかアルパカとか歩いてても無視や。びっくりするやろ。人間やったら間違いなく獲るで。でもそこにな、落とし穴もあんのや。

この前うちの従業員の一人がな、給料を一万円、前借りさしてくれって言うて来たんや。おれは、ええけど、どないしたんや? って訊いたら、携帯代が払えんくて、携帯が止まった言うねん。だから、そうか、携帯代はいくらやねんって訊いたら、七千円ですって言うんやんか。そんときにおれ、ああ、これやって思ったんや。

七千円足りへんねやったら、七千円だけ借りたらええやん。でもな、人ってな、不思議と多めに借りんねんな、これが。サラ金地獄にハマった子らなんかも、みんなそうやんか。どこそこに十八万払わなあかん金が無いからって言うて、十八万やなくて二十万借りてくる。今度は、その二十万返すために、別のところから多めに借りんでもええのに、二十二万借りてくる。その次は二十五万借りて、ってなるんやんか。こんなアホなこと、動物はせえへんで? でもな、人間はしてまうんやな、これを。

あらゆる動物のてっぺんいうて威張ってる人間がやな、下に見とる動物もせえへんようなダメなことをする。本来なら、もっと智恵があるっていうんやったら、もっと上等なことせなあかんやろ。つまりな、用立てなあかん金が十八万あったとして、他の動物がよそから十八万ぴったり借りてくるんやったら、人間はちょっと少ない十六万だけ借りてきて、残りの二万を自力でなんとかしなあかんのや、ほんまは。日雇い行くなり、持ってるもの売るなりして、どうにかこうにか足りへん金をつくらなしゃあない。

でもな、それができたらな、次十六万返すときに、借りてくるのはまた十四万でええんや。それでまた、足りへん二万はなんとかする。そうやっていったら、必ず返す金はなくなるんやから。じぶんの力が加わる分だけ、減っていくんやから。

まあな、実際、そのときが来たときに、うちの従業員の立場にオレがなったときに、果たして今言ったことが地でできるかいうたら、わからんで、たぶんちょっと、揺れると思う。でも、そういうことをオレは常に考えてるから、きっとやったるという自負もある。体が丈夫で動くうちはな、やったろう思う。」

イデトモタカ