ESSAY

2014-01-31

香水の詩。

あなたの首筋から、体から香水の匂いがする。それはあなたがこれだと認めて、どこかから借りてきた匂いだけれど、それでもわたしにとってはすでにあなたの匂いだ。

あなたはたったひとりの人だから、あなたの香水をつけている人がいると、少しだけ腹が立つ。もちろん売っているのだから、だれだって平等に買うことはできるのだけれど、けれどあれはあなたの匂いなのだ。

だれしもにだれしものあなたがいて、そのあなたがつけている香水があって、それを別の人の別のあなたがつけていることに、違和感を憶えてしまう。ちがう、ちがう、あなたには合っていないと。身勝手だけど、人間だから。

あなたがどこかから借りてきたあなたの匂い。だからわたしもどこかから借りてこられる。あなたは無理でも、せめて匂いは。それは少しだけ、あなたに秘密で、あなたを買った心もちがして、背徳的で誇らしい。知らないのは、あなただけだから。

お金であなたは買えないけれど、あなたの匂いはお金で買える。それはなんだか文字にしてみると、ひどく妖しくイケナイコトに思えるけれど、なんてことはない、ただの事実なわけで。

あなたの首筋から、体から香水の匂いがする。その香水を、匂いを、わたしはこそっと、じぶんの手首に、首筋にかけてみる。数秒も経たないうちに、あなたの匂いがして、わたしは満足して眠る。

イデトモタカ