ESSAY

2016-11-05

人生を押す。

前に、前に、進んでいるという、実感が希望になって、慰めになる。辛いのは、なにかばたばたと、縛られたり、急かされたり、やらなければいけないことに振り回されているのに、ちっとも前進している気がしないときだ。こんなに苦痛なことはない。

仕事でのストレスは、前に進んでいる実感や、喜びを、感じられずにひたすらやることだ。これをしてどうなるのだろうか、これでなにかが「進む」のだろうか。そんな疑問が頭にわいてくると、ぼくなんぞはずいぶんとまいってしまう。

趣味や、勉強や、その他どんなことでもいい。人生のなかで、生活や毎日のなかで、どれか一つでも「前に進む」ものをじぶんなりに用意して、1センチでも進めることは、ぼくは精神的な安定を保ついい方法だと思う。

小説を10ページ読み進めるだとか、きちんと記録をしながら筋トレをするだとか、いらないものを5個捨てるだとかでもいい。なかの見える貯金箱に500円玉を貯めるのでも、観たい映画リストの映画を30分観るのでも。

なんだっていいから、前に押すのだ。人生を、前に前に。勘違いしないでほしいのは、なにもぼくは「いいこと」をいいたいわけじゃない。人生の意味は成長だとか、じぶんを高めろだとか、そういう高尚な話ではなくて、ただ実感として「前進」を感じられない日々が積もっていくと、精神が知らず知らずに病んできたり崩れてくる。

そうじゃない人もいるのかもしれないけれど、おそらくぼくに似た人もいると思う。なんでもいいから前に押してほしい。ぼくもそうする。こころの健康管理をないがしろにすると、ほんとに、やっかいだから。だからどうだろう、今晩はあの本やあの小説を、10ページだけ読んでから眠るのは。

イデトモタカ