ESSAY

2017-04-15

資質や才能。

プログラマーに向いているのはどんな資質の人かと訊かれたとき、「パソコンの前にずっと座っていられる人」と答えた著名な経営者の人がいた。これはまさに卓見で、それ以外にはないほどの模範解答だとぼくは思った。

資質や才能の話は面倒だからあまりしなくなったけど、この「答え」はどこでだって役に立ちそうだ。本を書くのに向いている人は、原稿用紙やワード画面を前にして、ずっと座っていられる人だし、音楽の才能がある人は、楽器を一日中持っていたり、触っていたりできる人だ(他の誰よりも)。

だからぼくに旅人の才能はない。できれば家にいたいから。サッカー選手の才能もない。ボールを蹴っていたくないから。ああ、塗り絵の才能もない。すぐに飽きてしまうから。

なにかをするときは、他のなにかを犠牲にする。なにかができる人は、他のなにかができないかもしれない。できることに集中するのが幸せだと思う。できることに集中することで、ぼくらはぼくらの、生きる輪を大きくできる。

あの人に期待してもだめなのだ。別のあの人もきっと期待には応えてくれない。誰もぼくらを満足させるために生きていないのだから。瞬間的にそういうことはあっても、永遠ではない。

ぼくは(ぼくらは)常になにかを誰かに期待し過ぎる。そんなことより、なにならずっとしていられるか。どこにならずっと座っていられるか。あるいは動き回っていられるか。なにかを忘れたいのなら、忘れられるほど集中して。

イデトモタカ