ESSAY

2017-07-29

ロッカー。

あなたがぼくの過去の人であるとき、ぼくもまた、あなたの過去の人である。もうこころに居場所のない人である。そんな場所が昔あったとして。

思い返せば、学校に通っていたころは、教室のうしろのロッカーのように、こころにいくつもの居場所があった。クラスメイトだけで三十余人。全員に均等に割られていたわけではないけれど、それなりにみんなのことを気にしていた。

クラス替えのたびに居場所はふえて、ともだち百人にはほど遠かったものの、たくさんの人がぼくのこころに居場所を持ち、偶然出会っては遊び、話をして、なんとなく楽しい時間を過しもした。

幸いぼくは伸長にも恵まれ、勉強もそこそこできて運動も好きだった。容姿にこれといった特徴もないので、いじめる側にもいじめられる側にも縁がなかった。たぶんだれからも特別嫌われていなかったと思う。好かれてもいなかったはずだけれど。

だからみんなのなかでもぼくのロッカーは、居場所は、学校が変わったり、時間が経つと、すぐに他の人と入れ替わったのだろう。ぼくもすみやかにその場所を明け渡す。むしろ、自分から出ていきもした。

そうしてぼくはいつかの人になり、あなたもまた、ぼくのいつかの人になる。

数年間同じクラスで席も近かった女の子が、偶然電車で隣になった。彼女は気づいていないかもしれない。気づいているかもしれない。けれど、ぼくはもう過去の人なのだ。彼女もまた、過去の人なのだ。隣にいても、出会うことはない。別れることもない。

ぼくらはもう、互いに、いないのだ。さようなら、またいつか。

イデトモタカ