ESSAY

2017-09-03

視野の話。

じぶんの視野を拡げてくれた対象を、人は信じ過ぎてしまう。あれと出会って、あれを始めて、あそこに行って、こんなにも人生の視野が拡がった、という経験が、場合によってはその人の視野を狭めてしまうことだってある。

あれと出会ったのも素晴らしい。あれを始めた経験も素晴らしい。あそこに行ったのも素晴らしい。

みんなみんな、素晴らしいのだ。素晴らしくないことなんてないかもしれないくらい、けっこういろいろぜんぶ素晴らしい。そのなかで、じぶんがどれに、なにに、どこに、お世話になったのかは重要であっても、それを迷惑な親切心で他人にも強要するのは、むしろ視野が狭くなっている。

ぼくは読むことで人生が拡がった。ぼくは書くことで人生が拡がった。だからあなたも読むべきだし、書くべきだ、と言ってしまったら、ぼくの拡がりは、所詮その程度だったということになってしまう。

もちろん、読むことや、書くことは、自信をもってすすめられるし、どうぞぜひあなたもという気持ちがないわけじゃない。でも、あなたはあなたの好きなことをすればいい。好きなように、好きな場所に、なんだっていい。

じぶんの人生に影響を与えた存在は、絶対的に感じられても、あくまでも一部なのだ。この素晴らしい世界の、広大な世界の、ほんのほんの一部なのだ。それだけが絶対に正しい、それだけは他にも増して、いっそう優先的に素晴らしいと思ってしまったら、あなたはずいぶん視野が狭くなっている。

イデトモタカ