ESSAY

2018-03-26

またここから。

他のだれでもなく、じぶんにとって大事なことが書いてある、そういう本が3冊か4冊かあればいい。ふだんいろいろな本や文字や人の思想にふれるのはいいことだけれど、どうにも生活がうまくないときには、大事な本に戻ってくるのがいい。新しい本に手を出す前に。

じぶんにとって大事なことが書いてある、それは本のかたちをしてなくてもいい。ぼくは紙の本が好きだから、どうしてもそういう3冊か4冊は、紙の本のなかから選んでいるけれど、そんなことだってほんとは自由だ。

本でなくたっていい。詩でもいいし、歌詞でもいい。小説だっていいし、あるいは絵画だって。もちろん彫刻でも、映画でも、だれかからかけられたたった一言というのでももちろん構わない。戻ってくる場所があればいいのだ。「またここから」始められる。そういう場所があったなら。

分野が分かれているとなおいいかな。健康ならこの本。時間の遣い方についてはこの本。趣味や自由な生きかたではこの本。仕事で迷ったらこの本って。ぼくは本が好きだから本だけど、あなたの「それ」はなんだっていい。

繰り返しになるけれど、おすすめできないのは新しいものに手を出すことではないかと思う。悩んだり迷ったり体力がないときに。

けれどそれはぼくがこれまでに、ある程度の本を読んできたからいえることだろうかとも思ったけれど、あんまり読めていないときからぼくには、そういう3冊や4冊はあった気がする。

そのときそのときで、あるものなのだ。その世界でしか生きていないのだから。その世界のなかでのシンボルはある。

最後に矛盾することをいうけれど、まったく未知のものと出会うことで基準や見えるものがまるで変わる。そういう不明の存在との出会いはつねに持つ意識が必要だ。「またここから」始めながら。

イデトモタカ