ESSAY

2018-09-07

沈黙の夏。

本屋に行くと、じぶんが本を好きだったことをよく思い出します。ふだんは忘れているのかい、といわれれば、忘れているのだよ、と言わねばなりません。人は大事なことをいつもいつも忘れて生きているものです。

本を読んでいると、じぶんが読書が好きだったことをよく思い出します。これもまたついつい、過ごしているなかで忘れてしまっていることです。忘れてしまわないでいたいのに、忙しさとはこころを失くすものです。

ぼくの父親は現役時代、出世したり昇進したりするたびに、「そんなに偉くならなくていい」とよくいっていました。向上心がないように聞こえて、ぼくはなんとなくそれが嫌だったのですけれど、本人は「だって忙しくなる」とぶつぶついっておりました。そんなことよりたぶんもっと遊びたかったのだと思います。

今になって思えば、人生とはなんなのかをよくわかっていたのでした。ぼくも偉くなるかどうかはどうでもいいことですけれど、忙しさは適度でありたいと思います。

人生をする時間がなくなりますから。本屋に行ったり、本を読んだり、映画を観たり、おいしいものを食べたり。

そして、気の合う人と仲良く過ごす時間が。

イデトモタカ