ESSAY

2019-09-10

文化と常識の交換。

体を重ね合うことだけが恋愛ではないように、観光地を巡ることだけが、旅ではありません。恋愛も、旅も、醍醐味は「文化と常識の交換」ではないかと思っております。

生まれてから深い恋愛をするまで、あるいは旅をするまで、文化とは母親であり、常識とは父親であります。たとえそのどちらかが欠けて育ってきたとしても、家庭のなかにそれらはあります。

しかし、それらが当たり前の文化や、全員にとっての常識ではないことを、いつか知らなければいけません。その驚きと衝撃が、器をひろげ、人間を豊かにするからです。

表面的ではない、お互いを知り尽くすような恋愛をすることで、あるいはその土地や国や人々のなかに入り、客としてではなく、生活者として生きることで、母親の文化は偏った文化でしかなく、父親の常識は、世界の常識ではないことを知ります。

それがぼくらを、母親のコピーではない、父親の代替品ではない、一人の人間にしていきます。もちろん恋愛でなくとも、旅でなくとも、文化と常識を知る手立てはあります。でも先の二つに優る手段は、そうないはずです。

恋愛をしましょう。旅をしましょう。大人が若者にそう言う気もちが、ようやくわかってきました。どちらも、正直ぼくはそれほど積極的ではないですが、ぼくを育ててくれたのは、間違いなく彼らなのですから。

イデトモタカ