サヨナラと、エッセイだけが、人生だ。

  1. おやゆび便り

名は体を表すか

ぼくが高校1年のとき、3年の先輩に
山本さんという女の人がいた。
姉の友だちでもあったので、
いっとう可愛がってもらったのだけれど、
その人は今思い出しても優秀で、
とてもユニークな人だった。

フランスにフランスパンを買いに行くんだ、
といって冗談かと思ったらほんとうに
行って買ってきたりする。
もちろんフランス語なんて話せないので、
じぶんの感情や気もちを笛の音で表現する、
なんていって出発の日の明け方まで
ピーピーピューピュー笛を吹いていた。
(そして笛を忘れていった。)

思考実験も好きな人で、あるときのテーマは
「名は体を表すか」だった。
平たく言えば「名前が人生に与える影響」
について興味があるのだと。
「どうやったらそれがわかるの?」
と訊くと、嬉々としてこう話してくれた。
ちなみにだけど、ぼくは先輩から
「いでっころ」という有り難い呼び名を
いただいていた。

「いでっころよ、
私は将来ふたごを生もうと思う。

それでひとりは「シュン」とかそういう
サッカー部のエースみたいな名前にして、
もうひとりを「たごさく」にする。

見た目も教育もほとんど同じふたりが
名前だけでどれだけ人生が変わるのか!」

なんて残酷なことを思いつくのだろうか。
ぼくは心の底から先輩を恐れた。
(でもぜひ実現してほしかった。)

仮に名字が山本のままだったとすれば、
「山本 俊」と「山本 田吾作」。
ふたりの人生は……違うだろうなあ。
ことばには魔力があるといわれるけれど、
たしかに名前や呼び名は重要だと思う。

明日、新しい元号が発表される。
それがなにかによって、
次の時代に影響があるかもしれない。
し、ないかもしれない。
それはわからないけど、
ぼくらが今後何十年も使っていくことばだ。
どういうものになるのか、
影響は決して小さくない。

平成と呼ばれた時代がもう一ヶ月で終わる。
これももし違う名前だったなら、
なにかが変わっていたのだろうか。
ぼくは昭和に生まれて、平成で育ち、
そして次の時代を生きていくことになる。
あなたも似たようなものだろう。

どきどきするね。
新時代。

では、また書きます。

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