サヨナラと、エッセイだけが、人生だ。

  1. おやゆび便り

何十年のぼくらしさ

両親がやってきた。
遠足みたいなもので、
忙しく旅程があったようだけれど、
何番目の目的なのか、
実家を出たぼくの家にも立ち寄った。

ぼくの家なので、
ぼくがいなければつまらんということで
何日か前からは聞いていた。
改元にも合わせて大掃除をしよう
とは思っていたので、
それもまたちょうど良かった。
(けっきょくは間に合ったのか
間に合わなかったのか微妙な状態で
迎え入れることにはなったのだけれど。)

買い出しにも行って、
できるだけの快適を提供する努力をした。
お酒をつぎ、料理をつくり、
できあがったものから皿を出しては、
お酒をつぎ、洗い物をして、
料理をつくる。
そしてだす。

ずいぶんと気持ちよくなった父親が
横になっていびきをかいてから、
また買い出しに行って、
おいしかったもうないのか
と言われた料理の材料を再度買い、
白ワインが合うんじゃないか
といわれたので白ワインを買い、
戻ってきてまた料理をつくっては、
お酒をつぎ、皿を洗って、
料理をだす。

どれも実家にいたときには
まったくやったことのないことだ。
たかだか一年前までぼくは
実家にいたのだから、
両親からすればぼくは、
わずか一年ばかりでまる知らぬ男に
なってしまったということになる。

それは成長かもしれないけれど、
ずっと成長を見てきた両親からすれば、
まるで知らないところで
まるで知らないうちに
じぶんとは関係なく行われた成長であり、
実際のところどう思ったのだろうか、
とちょっと気になる部分はある。

口ではうれしいというかもしれない。
安心したとかよかったとか、
いうかもしれない。
でもほんとうはどうなのだろうか。
こればっかりはまだぼくにはわからない。
ぼくはきっとどんどん知らない男になる。

何年も、何十年も経って、
そうやって知らない男として
成長していってなお抜けきらない、
なくならずに残っているぼくらしさが、
ほんとうのぼくらしさなのだろう。
それこそが、両親から受け継いで、
育ててもらった部分なのではなかろうか。

では、また書きます。

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